便秘のタイプと原因を知ろう

便秘とは

一般的に3~4日に1回またはそれ以下の排便回数の場合を便秘といいます。

排便回数だけでなく、便の量が少なかったり、非常に硬くて強くいきまないと出ない、毎日排便があっても残便感がある状態も便秘と考えられています。

あなたの便の状態はどれですか?

引用:排泄ケアナビ

上の図は「ブリスケトルスケール」 という便の健康状態を判断するための国際的な基準です。

ブリストルスケールでは、数字が小さいほど便が含む水分が少なく硬くなり、数字が大きいほど便は水っぽくなります。便秘のときの便は、ブリストルスケールでいうとタイプ1から2の水分の乏しい便になります。一方、下痢のときの便は、水分が多くなり、ブリストルスケールではタイプ6から7にあたります。

便秘の原因

  • 食物繊維の少ない食事
  • 偏食やダイエットなど、極端に少ない食事量
  • 水分摂取不足
  • ストレス
  • 腸の運動や筋力の低下
  • 排便反射の低下
  • 消化器系の疾患(大腸がん・クローン病・過敏性腸症候群など)による腸の狭窄(狭くなること)・閉塞(ふさがってしまうこと)や蠕動(ぜんどう)運動の障害など
  • 糖尿病・甲状腺機能低下症などの内科系疾患
  • 神経系疾患(自律神経失調症・脊椎損傷・パーキンソン病など)による蠕動運動(腸の運動)の麻痺
  • 内服薬による副作用

便秘はいろいろな原因が重なり合って起こります。

また、便秘は男性よりも女性の方が多く、若い方よりもご高齢の方に多くみられます。

便秘を解消する5つの生活習慣

1.水分補給をしっかりとする

便を柔らかくするのに水分摂取は欠かせません。一度にたくさんの水を飲むよりも、こまめに水分補給をするように心がけましょう。

2.水溶性食物繊維の入った食事をする

食物繊維は便秘解消に役立つ栄養素です。インスタント食品や外食が多いと、食物繊維は不足しがちになります。食物繊維の豊富な食材を意識して摂取しましょう。

おすすめは 海藻やこんにゃく、大麦など。水に溶けて便を柔らかくしてくれる水溶性食物繊維を豊富に含んでいます。

一方で、穀物や豆類・きのこ・芋類・野菜・果物などに含まれる水に溶けないタイプの不溶性食物繊維は取りすぎると逆に便秘を悪化させることがあるので食べる量には注意が必要です。

3.乳酸菌や発酵食品をとる

便秘を解消するためには、腸内細菌も大切です。善玉菌といわれる乳酸菌はヨーグルトや乳酸菌飲料に含まれていますので、定期的に召し上がるといいでしょう。

また、腸内細菌は1種類だけ増やすよりも、いろいろな種類の腸内細菌を増やすこともポイントです。菌の種類を増やすために納豆や味噌、醤油、塩こうじなどの発酵食品も積極的にとりましょう。

4.適度な運動をする

適度に体を動かすことで、腸の運動も活発になり便秘を解消することができます。ウォーキングやお腹をマッサージすることでも腸の運動を活発にすることができるので、ご自身でできるレベルで挑戦しましょう。

5.生活のリズムを整える

生活リズムが乱れるとホルモンバランスや自律神経のバランスが乱れ、便秘になりやすくなります。お仕事や家事で忙しい毎日ではありますが、やはり規則正しい生活と睡眠を心がけましょう。

一般的な下剤と漢方便秘薬の違い

一般的な下剤(西洋薬)は「出させる」ことが得意

病院で処方される、あるいはドラッグストアで販売されている下剤には以下のような成分が含まれています。

  • 酸化マグネシウム(マグミット®
  • カルメロースナトリウム(バルコーゼ®
  • ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン®
  • ルビプロストン(アミティーザ®
  • ポリカルボフィルカルシウム(コロネル®)   など

下剤は腸を直接刺激したり、便に水分を含ませて柔らかくしたりすることで排便を促すお薬です。たまった便を「とにかく出させる」「便が出ればOK」というお薬です。

つらい便秘を少しでも早く解消したいという時にはとても頼りになるのですが、薬を飲むのを止めるとまた便秘状態に戻ったり、あるいは下剤に体が慣れてしまい、逆に便秘体質が悪化してしまうというケースもあります。

漢方便秘薬は便秘を体質から改善する

漢方薬による便秘の治療でも「便を出す」ということは重要ですが、それと同時に、なぜ便秘をしているのか?どうしたら便秘を繰り返さない体質になるのか?という点を大切にしています。

便秘の漢方治療

血(けつ)の不足と便秘

月経不順や貧血を感じる方の場合、全身をめぐり栄養を届ける血(けつ)の不足が考えられます。血(けつ)はからだを温めるための栄養を送り届けると同時に、潤いを届ける働きもあります。血の不足による便秘では便に潤いがなくパサパサしている、より血が不足している方ではコロコロ便が見られます。

血の不足による便秘では、便通を改善する生薬とともに、不足した血を補う当帰(とうき)や熟地黄(じくじおう)が配合された漢方薬を用います。

冷え体質と便秘

おなかが冷えている、あるいはからだ全体の冷えている場合、腸の働きが低下して便秘を引き起こしていることが考えられます。

おなかを温める代表的な生薬として山椒(さんしょう)や乾姜(かんきょう)、桂皮(けいひ)があげられます。また、加齢や病後の衰弱による新陳代謝の低下による冷えが見られる場合には人参(にんじん・薬用人参)や附子(ぶし)が配合された漢方薬が考慮されます。

ストレスと便秘

ストレスを感じていたり、気持ちの落ち込みや不安感があると自律神経が乱れて便秘になります。

気持ちが硬くなっているから腸の動きも硬くなり、便も硬くなり慢性的な便秘体質へとつながります。あるいは人によっては、気持ちが不安定だから腸の動きも不安定になり、便秘と下痢を交互に繰り返すようになります。

便秘の原因としてストレスが考えられる場合は、単に便を出せばよいというものではありません。

こころのエネルギーである気(き)のめぐりを改善することが便秘解消のポイントとなります。ストレスをため込まず、ストレスを受け流しやすい体質を目指すことが、すなわち便をため込まず、便を出しやすい体質につながります。

西洋薬と漢方薬のどちらを選べばいいですか?

旅行や出張、引っ越しなどによる一時的な環境の変化による便秘であれば、効き目が早い西洋薬の下剤がいいでしょう。

一方で、もともと便秘体質だったり、1か月以上便秘が続いているという場合には、漢方薬で体質から便秘を改善することをおすすめします。

また、便秘だけでそれほど深刻に悩んでいるわけではないけれど、肩こりや生理痛、冷え性があって、全体的に調子が悪いという場合にも、体質から改善する漢方薬をおすすめします。

体質から選ぶ漢方便秘薬5選

便秘を改善する漢方薬はたくさんの種類がありますが、その中でも当薬局の漢方相談で使用頻度の高い漢方薬をご紹介します。ご自身にぴったりの漢方便秘薬を見つけてみてください。

  1. おなかが張って残便感がある方→桂枝加芍薬大黄湯
  2. イライラしやすい方(女性)→加味逍遙散料
  3. イライラしやすい方(男性)→柴胡加竜骨牡蠣湯(黄芩)
  4. 疲れやすく便がコロコロしている方→潤腸湯
  5. 肥満気味で血圧の高い方→防風通聖散料

1.桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)

桂枝加芍薬大黄湯は、 おなかが張って腹痛や残便感がある方向けの漢方薬です。便意があるのに思うように出てくれないという方におすすめです。

2.加味逍遙散料(かみしょうようさんりょう)

加味逍遙散料は、体質虚弱な婦人で、肩こり、疲れやすい、精神不安等があり、ときに便秘傾向がある人の、冷え症や月経不順、更年期障害、血の道症に用いられる漢方薬です。

3.柴胡加竜骨牡蠣湯(黄芩)(さいこかりゅうこつぼれいとう・おうごん)

柴胡加竜骨牡蛎湯(黄芩)は、どちらかといえば体格のいい男性向けの漢方薬です。
精神不安があって、動悸、不眠等を伴う、高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、便秘に用いられる漢方薬です。

4.潤腸湯(じゅんちょうとう)

潤腸湯は便が乾燥気味でコロコロしている方向けの漢方薬です。血色が悪く肌が乾燥しがちな方や、ご高齢の方の便秘によく用います。

5.防風通聖散料(ぼうふうつうしょうさんりょう)

防風通聖散料は、がっちり体型の方向けの漢方薬です。
腹部に皮下脂肪が多く、高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)、肥満症に用いまられす。

おわりに

当薬局へは便秘のご相談が多く寄せられています。

単純に便を出すだけであれば市販の便秘薬でもよい場合はありますが、便秘を体質から改善したいという場合は、やはり体質にぴったりの漢方薬選びが大切です。

便秘は、漢方が得意とする症状のひとつです。

まずはお気軽にご相談ください。