むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)とは

むずむず脚症候群は、レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)あるいは下肢静止不能症候群とも呼ばれます。

静かに座っているときや横になっているときに、脚、腕またはその両方を動かしたいという抗いがたい衝動に駆られる病気で、通常はこれらの部位に異常な感覚も生じます。

むずむず脚症候群は、どの年代でも発症しますが、特に60~70歳代に多く、男性より女性に多くみられる傾向があります。

むずむず脚症候群の4つの特徴
  1. 脚を動かしたいという強い欲求が下肢の異常感覚により起こる。
  2. 異常感覚は、静かに寝ているか、座っている状態で始まる。
  3. 異常感覚は運動で改善する。
  4. 異常感覚は夕方・夜に強まる。

脚の異常感覚は、「チクチクする」「虫が這いずり回るような感じ」「ほてる」などとも表現されますが、脚の表面ではなく、深部で生じる感覚であることが特徴です。

患者さんの多くは不眠を訴えます。さらに不眠を助長するのは、患者さんの8割以上に起きる周期性四肢運動障害(PLMD)です。足関節、足指、ひざなどが屈曲する不随意運動が繰り返し起きる症状です。

むずむず脚症候群の西洋医学的な原因と治療

現在のところはっきりとはわかっていませんが、脳の神経伝達物質であるドパミンの機能障害が関係しているとされています。また、鉄不足がむずむず脚症候群の原因になるともいわれています。ドパミンをつくるのには鉄が必要なため、鉄が不足するとドパミンの量が減少してしまいます。

根治的な治療法はありませんが、パーキンソン病の治療薬やその他の薬剤が症状のコントロールに役立ちます。

カフェインは症状を悪化させる可能性があるため、摂取しないことが推奨されます。鉄が不足している場合、主な治療は鉄のサプリメントです。

むずむず脚症候群の漢方治療

痙攣や運動麻痺を起こす内風(ないふう)

漢方医学には、様々な病気を引き起こす原因の一つとして、風邪(ふうじゃ)という考え方があります。

台風のように強い風が吹くと、木々がザワザワと揺れ動き、場合によっては物が飛ばされ壊れることもあります。

からだの中を風(ふう)が駆け抜けることで、頭痛やめまい、痙攣などを引き起こされます。

風邪(ふうじゃ)には、ウイルスや細菌など外部からの影響で引き起こされる外感風邪(がいかんふうじゃ)と、慢性疾患や熱病の経過で人体の機能に重篤な障害が生じたために発生する内風(ないふう)があります。

漢方医学では、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)や周期性四肢運動障害(PLMD)の原因は内風(ないふう)であると考えます。

脚の中を風が吹くことでザワザワとした違和感が生じ(RLS)、さらに風が強ければ意識していないにもかかわらず勝手に動いてしまう(PLMD)という考え方です。

内風(ないふう)の原因は陰の不足

からだの中で風(ふう)が生じる代表的な原因として陰(いん)の不足があげられます。ここでの陰は、からだの中の血や水などのうるおい物質とお考え下さい。

陰の不足で風が起こるとはどういうことか、自然の様子をイメージしてみてください。

雨が降らずに日照りが続くと(うるおいの不足)、山火事が起こります(熱症状)。その炎は空気の流れを変え上昇気流を生み出します(風の発生)。

つまり、むずむず脚症候群を改善するためには、その原因となる内風(ないふう)を鎮めればよい。そのためには、からだのうるおいを回復させ、熱を冷ませばよいということです。

むずむず脚症候群を改善する漢方薬

漢方には、むずむず脚症候群の専用薬、あるいは特効薬というものはありません。あくまで、からだ全体の不調がむずむず脚症候群という「症状」として現れていると考えます。それゆえ、体質にぴったりの漢方薬選びが改善のカギとなります。

むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)の漢方治療では、その症状を引き起こしている内風(ないふう)を鎮めると同時に、そもそも内風を起こさせないために陰(血・水)を補う必要があります。

頻用される処方の一つに抑肝散料(よくかんさんりょう)があげられます。

抑肝散料に配合されている生薬のうち、釣藤鈎(ちょうとうこう)には鎮痙鎮静作用があり、当帰(とうき)は血を補う作用に優れます。むずむず脚症候群の症状に加え、イライラしやすい、寝つきが悪いなどの症状がある方に適しています。

加齢により陰が不足し、むずむず脚症候群を引き起こしている場合には八味地黄丸料(はちみじおうがんりょう)が用いられます。

八味地黄丸料に配合されている地黄(じおう)には、加齢により減少しがちな陰と血を補い、過剰な血のほてりを冷ます働きがあります。下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿などの症状がある方に適した漢方処方です。

その他の処方として、むずむず脚症候群の症状以外に月経前症候群(PMS)や更年期障害がある方には加味逍遥散料(かみしょうようさんりょう)、たんが切れにくくてせきこみ、皮膚が浅黒く乾燥し、便秘傾向がある方には滋陰降火湯(じいんこうかとう)などの漢方薬も使用されます。

おわりに

むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)は、その症状の不快感だけでなく、慢性的なストレスや睡眠不足を引き起こすなどQOL(生活の質)に対してとても大きな影響があります。

漢方薬による治療では、じっくりと体質から改善していくため、必ずしも即効性はありませんが、むずむず脚症候群には漢方薬が適していると考えております。

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