心因性嘔吐とは
心因性嘔吐(神経性嘔吐)とは、嘔吐の原因となる明らかな異常がなく、心理社会的なストレスが原因で嘔吐するものを示します。
- 朝、学校へ行こうとすると気持ち悪くなる。
- 運動会や発表会の前に気持ち悪くなる。
- 苦手な場面で気持ち悪くなる。
- 平日は吐き気があるが、休日は平気。
- 人前で吐いたことがトラウマとなり、予期不安で吐いてしまう。
- 車や電車を見ただけで気持ち悪くなる。
- 特定の時間だけ気持ち悪くなる。
症状の現れ方は人それぞれですが、不安や緊張を感じる場面から離れると吐き気は治まります。
腹痛や便通異常など、吐き気以外の症状が現れることは稀です。
くり返す吐き気や嘔吐は、ご本人はもちろん、そのご家族や周囲の方にとっても辛い症状です。学校やお仕事などの社会活動にも影響が出るため、早めの治療開始をおすすめします。
西洋医学による心因性嘔吐の薬物治療
一般的には、吐き気を抑えるナウゼリン®(ドンペリドン)やトラベルミン®配合錠などが処方されます。また、不安や緊張を抑えるためにエビリファイ®(アリピプラゾール)などの向精神薬が処方される場合もあります。
漢方医学による心因性嘔吐の考え方
胃は口から入った食べ物を消化して、十二指腸へと送り出す臓器です。ざっくり言えば、「上から下へ」運ぶ働きです。
リラックスした状態で気持ちが安定していることを、「気持ちが落ち着いている」と表現しますね。
逆に、緊張や不安を感じる時の心のざわざわ感を漢方では、落ち着くの反対として「気(き)が上がっている」と表現します。
気が上がることで、本来は上から下へ運ぶ胃の働きが乱され、下から上へ逆流する。上にあがってくるから気持ち悪い、吐いてしまう。これが心因性嘔吐の正体です。
漢方の専門用語では、肝気犯胃による胃気上逆と表現します。
漢方による心因性嘔吐の体質改善
- 気持ちの「気」のめぐりを改善し、過剰に高ぶらない安定した状態にする。
- 「胃」のはたらきを高め、上から下へ運ぶ本来の機能が乱れないようにする。
心因性嘔吐の原因は精神的なストレスです。
吐き気を「止める」のではなく、吐き気が起こらない状態、すわなち心身ともにリラックスした自然な状態を目指します。
気のめぐりを改善し、過剰な不安感や緊張感を改善する代表的な漢方薬として、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、香蘇散(こうそさん)、四逆散(しぎゃくさん)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などがあります。
胃腸の機能を高める代表的な漢方薬としては、茯苓飲(ぶくりょういん)、二陳湯(にちんとう)、六君子湯(りっくんしとう)などがあります。
これらの漢方薬を、一人ひとりの症状や体質に合わせて使い分け、場合によっては組み合わせて使うことで繰り返す心因性嘔吐を体質から改善することが出来ます。
おわりに
心因性嘔吐では、吐き気や嘔吐による肉体的なつらさだけでなく、「また気持ち悪くなるかもしれない。」「また吐いたらどうしよう。」という精神的なつらさがあり、それがさらに症状を悪化させてしまいます。
心因性嘔吐の体質改善に用いる漢方薬は、苦みがあり少々飲みづらい処方が多いのですが、幼稚園の年長さんの女の子も頑張って飲んでくれています。ある小学生の男の子は毎回「まずい!」と文句を言いながらも、「漢方飲んでると感心する」と笑顔を見せてくれています。
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