舌痛症とは

舌や歯肉に明らかな炎症や潰瘍がないにもかかわらず、舌がヒリヒリする、焼けるような・やけどをしたような痛み、または痺れた感じがするものを舌痛症と呼びます。

また、口の渇きやザラザラ感、味覚障害を伴うこともあります。

舌の痛みのために仕事が出来なくなったりなど、日常生活に支障が出ることも少なくありません。

通常、舌を何かの拍子に噛んでしまったり、舌に何か出来物がある場合には、とても痛くて食事がしにくいものです。

しかし、舌痛症の患者さんに共通していることは、不思議なことに食事の間の方が、むしろ痛みは楽になるという特徴があります。

舌痛症は中高年の女性に多く、閉経後の女性の有病率は12~18%ともいわれます。

見た目には異常がないため、なかなか他人に理解してもらえない症状の一つです。

舌痛症の特徴

  • 舌の痛みが1日2時間以上あり、3か月以上続いている。
  • 痛む場所が変わる。
  • 味覚が変に感じたり、口が乾く。
  • 会話をしたり、食事をすると楽になる。
  • 午前中は軽く、午後に痛みが増す。
  • 心配事や疲れにより悪化する。
  • 鎮痛剤が効かない。
  • 睡眠中は症状が無い。

舌痛症の原因と治療

まだはっきりとした原因は解明されていません。

精神的な要因やホルモンバランスが関係しているのではないかと考えられています。

その治療には、一般的に抗うつ薬や抗てんかん薬が用いらますが、必ずしも良好な結果は得られておらず、西洋医学を専門とする医師や歯科医師においても、漢方薬による治療に注目が集まってきているようです。

東洋医学による舌痛症の考え方

東洋医学は、一部分だけをピンポイントで診るのではなく、全体を大きく診る、という特徴があります。

つまり、「舌」だけに注目するから原因が見えてこない。

精神面まで含め、体全体を見渡した時にはじめて本当の原因が分かるものです。

舌痛症では特に「心(しん)」と「脾(ひ)」に注目することで、解決の糸口が見えてきます。

舌の痛みは、こころの痛み

東洋医学には、「心(しん)は舌(ぜつ)に開竅(かいきょう)する」という言葉があり、こころ(精神)の状態が舌に反映されるという意味です。

つまり、舌の痛みは、こころの痛みであるという考え方です。

実際に、舌痛症の患者さんの多くが不安感や緊張感、うつ、不眠などの不調を伴っています。また、心理的な負担を強く感じると、舌の痛みが増すという点においても、精神面のケアが大切なことがうかがえます。

舌の痛みに加えて、

イライラしやすく、月経痛や月経不順がある方には、気血のめぐりを整え、リラックスさせる作用のある加味逍遙散(かみしょうようさん)が適しています。

ストレスを感じやすく、のどが詰まる感じがある方には、気のめぐりを改善し自律神経を整える半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や柴朴湯(さいぼくとう)が適しています。

舌は消化器の一部

西洋学では胃や小腸、大腸、膵臓などをそれぞれ単体の臓器と考えます。一方、東洋医学ではまとめて一つの消化吸収システムと考えます。この消化吸収システム(口から肛門まで)のことを「脾(ひ)」と呼びます。

舌は食べ物や飲み物が最初に触れる部分、すなわち脾(消化器)の一部分と捉えることが出来ます。

一つの脾としてお互いに深く関連しているがゆえに、舌そのものに外見的な異常はなくても、例えば胃の痛みや下痢・軟便などがある場合、その影響が舌に波及し、舌の痛みとなることがあるのです。

つまり、舌の痛みとは一見関係なさそうな胃薬や下痢止めの漢方薬で舌痛症が改善することがあるのです。

舌痛症の治療に、食欲不振や胃炎を改善する黄連湯(おうれんとう)や、下痢体質を改善する半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)が用いられるのはこのためです。

特に黄連湯(おうれんとう)は、ストレスを感じやすい方の薬でもありますので、近年では舌痛症の定番処方となっています。

その他の漢方薬

白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)、麦門冬湯(ばくもんどうとう)、滋陰降火湯(じいんこうかとう)、香蘇散(こうそさん)、立効散(りっこうさん)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、茯苓飲(ぶくりょういん)、清熱解鬱湯(せいねつげうつとう)、六君子湯(りっくんしとう)など

お気軽にご相談ください

西洋医学において、舌痛症は原因不明とされています。

漢方薬においても、「かぜの引きはじめには葛根湯」のように、「舌痛症であれば〇〇湯」という決まった漢方処方があるわけではありません。あくまで、一人ひとりの体質に合った漢方薬選びが大切になります。

舌痛症は時間がたてば自然に治るものではありません。

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