チック症・トゥレット症とは

チックは、思わず起こってしまう素早い身体の動きや発声です。

典型的には、4〜6才に症状が出現し、症状は10〜12歳ぐらいに一番強くなり、成人になると改善していきます。しかし、成人期になっても強い症状が持続していたり、成人期になってからの方が悪化するという場合もあり、経過は多様です。

チックは、顔や手足が動く運動チックと、発声や言語の特徴による音声チックに分けられます。

運動チックでは、まばたきをする、顔をしかめる、急に頭をふる、肩をすくめる、勝手に手が動く、ジャンプするなどの症状が見られます。

音声チックでは、ぶつぶつ言う、どなる、においをかぐ、鼻を鳴らす、せき払いをするなどの症状がみられます。

こうした症状が1年以内に消失するものを一過性チック、運動性か音声チックのいずれかが1年以上続くものを慢性チック、両者が1年以上続くものをトゥレット症候群と言います。

チック症の原因

チック症の原因は分かっていません。

以前は、親からの愛情不足や厳しい子育てによる心理的な原因で現れると誤解されていました。

現在では、チック症は体質的な疾患で、脳の働き方の違いによって起こるものであることが分かってきました。

一方で、チック症の症状を悪化させる要因として、ストレスや過度な興奮、疲労などが関係していることも分かってきました。

チック症の漢方治療

チック症の漢方の捉え方

西洋医学的では、チック症の原因は明確になっていません。

一方、漢方の視点から症状を見た場合、

  • 無意識に筋肉が動いてしまう。
  • ストレスなど精神的な要因で悪化する。

この2点に注目することで改善の糸口が見えてきます。

五臓図

漢方医学では、内臓を肝(かん)、心(しん)、脾(ひ)、肺(はい)、腎(じん)の5つに分類します。

漢方医学では、チック症は肝(かん)のトラブルであると考えます。

ここでいう肝は、西洋医学的な肝臓とは異なります。

肝のはたらき
  • 自律神経を整える
  • ストレスに関連
  • 体内の血液量を調節する
  • 生理を調節する
  • 筋肉の動きをコントロールする

肝は、緊張や不安、興奮、イライラなどの精神的なストレスをコントロールする臓器です。しかし、そのストレスが大きいと肝が弱り、十分にその機能を果たせなくなります。

肝の働きが乱れることで、筋肉の動きにも異常が現れ、無意識に筋肉が動いてしまうというチックの症状となります。

この考え方は、チックは体質的な原因があり、精神的なストレスで症状が悪化するという西洋医学的な考えとも合致します。

運動が得意な子もいれば、そうでない子もいます。それと同じように、肝(かん)の強弱も人それぞれです。チック症になったことは親の育て方が悪かったわけでもありませんし、ご本人の性格の問題でもありません。あくまで個人差として肝が敏感であったという体質的な原因です。

体質ですので漢方による改善が十分に期待できます。

誤解を恐れず言えば、冷え性や胃腸虚弱の体質改善とそれほど変わりません。

一緒にがんばりましょう。

チック症を改善する漢方薬

チック症の漢方治療では、

  • 抑肝散(よくかんさん)
  • 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
  • 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
  • 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
  • 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

などが使用されます。

これらの漢方薬を年齢や症状、体質に合わせて適宜選択し、場合によっては複数の漢方薬を組み合わせながらチック症の症状の緩和と体質改善を進めていきます。

ただし、チック症においてはその症状の敏感さゆえに、慎重に漢方薬を選ぶ必要があります。安易な自己判断で市販薬を試すことはお勧めできません。

まずはお気軽にご相談ください。