虚弱体質とは

子どもたちの元気な姿は、まわりの大人たちまで元気にしてくれますね。

「虚弱体質」という医学的な病名はありませんが、病気ではないのに何となく元気がない状態を指します。

症状は一人ひとりで異なりますが、主に下記のような症状が見られます。

  • よく風邪をひいてしまう。
  • おなかが弱くて、緩くなりがち。
  • 食が細く、すぐにお腹がいっぱいになってしまう。
  • 全体として線が細い。
  • 同年代の子よりも疲れやすい。
  • 疲れたり、緊張したりすると気持ち悪くなる。

小児虚弱体質の西洋医学の対応

西洋医学は対症療法

一般的な小児科さんを受診した場合、吐き気があれば吐き気止め、下痢をしていれば下痢止めや整腸剤、カゼをひいたら咳止めや解熱剤が処方されます。

症状が続くようであれば再度受診し薬を継続しますし、症状が無くなれば治療は終了です。

これ自体は通常の治療の流れですし、漢方の立場から見ても異論はありません。

いま出ている症状を「止める」という点において、西洋医学の薬は力を発揮します。

そもそも、子どもは大人に比べて免疫系だけでなく、からだのあらゆる部分で未熟なものです。大人に比べてかぜを引きやすかったり、お腹を下しやすかったりするのはある面では当然のこととも言えます。

しかしながら、いくら子どもはかぜを引きやすいと言っても、一年中かぜ薬を飲んでいることが健康に良いかと言われれば、やはりそれは違います。

西洋医学で体質改善は難しい

かぜの症状を症状を止めることはできても、かぜを引きやすいという「体質」となると西洋医学では十分な対応できません。

クリニックや薬局で相談しても、「バランスの良い食事をしましょうね。」、「適度に運動してくださいね。」などの返事しかもらえなかった経験があるのではないでしょうか。

小児の虚弱体質は、たしかに病気ではありませんし、検査でも異常はないと言われます。

でもやっぱり心配ですよね。

そこで漢方薬の出番です。

小児虚弱体質の漢方の考え方

脾(ひ)と腎(じん)が成長を促す

五臓図

漢方医学では、内臓を肝(かん)、心(しん)、脾(ひ)、肺(はい)、腎(じん)の5つに分類し、健康状態や体質改善の方法を考えます。

肝(かん)自律神経を調節
ストレスに関連
体内の血液量を調節する
月経を調節する
心(しん)心臓や血液循環を整える
意識や精神を正常にする
睡眠に関係
脾(ひ)消化吸収の中心
食物から気を生み出す

血管を丈夫にする
肺(はい)呼吸機能の中心
気を生み出す
体液のバランスを整える
免疫を整える
腎(じん)成長、生殖、老化の中心
水の巡りを整える
泌尿器の中心
中枢神経系に関連
ホルモンなどを調節

五臓のうち、子どもの虚弱体質と関連が深いのは脾(ひ)と腎(じん)です。

脾(ひ)は、食べ物から栄養を取り出すはたらきがあります。脾が弱いと栄養を十分に吸収することが出来ません。脾が丈夫であれば、食事の量が増え、あるいは同じ量を食べたとしても効率よく栄養を吸収できるため、からだが丈夫に育っていきます。

腎(じん)は西洋医学的な腎臓とは異なり、「命を養う臓器」と考えます。まさに成長と発育の中心的な臓器です。

腎(命)が育つことで骨が太く丈夫に育ち、からだが大きくなります。さらに腎が育つと、男の子では11歳ごろに精巣が大きくなり生殖器が成熟し、陰毛の発生、声変わりと進み、女の子では10歳ごろに乳房が発育し始め、陰毛の発生、初潮を迎えます。

虚弱体質改善における大人と子どもの違い

虚弱体質の改善を考えるとき、大人と子どもでは少し考え方が異なります。

大人の方で脾や腎が弱い場合、たとえ西洋医学的な疾患がなくとも、漢方医学的には「異常」と捉え、「治療」が必要であると考えます。

一方、子どもの場合は脾や腎の弱さは異常ではなく、「未熟」と考える方が適切です。そもそも子どもは発育の途中段階ですので、大人に比べればあらゆる面で弱いのは当然のことです。漢方薬の使用においては、「治療」を目的とするのではなく、脾(消化吸収能力)や腎(生命力)をサポートし、発育を促すことを目的とすることがポイントとなります。

小児虚弱体質を改善する漢方薬

代表的な漢方薬として、

  • 小建中湯(しょうけんちゅうとう)
  • 黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
  • 四君子湯(しくんしとう)
  • 六味地黄丸(ろくみじおうがん)

などが頻用されます。

とくに小建中湯(しょうけんちゅうとう)は甘くて飲みやすいため、小さなお子さんでも無理なく服用することができます。当薬局の患者さんの例では、1歳や2歳の子でも問題なく服用できています。

胃腸の機能をサポートする小建中湯(しょうけんちゅうとう)

小児漢方の代表できな処方が小建中湯です。

中はお腹、建は(立派な建物を)建てるの意味で、胃腸を丈夫に育てる漢方薬です。

胃腸が丈夫になることで栄養の消化吸収力も上がり、代謝や免疫力が向上します。

虚弱体質の改善を目的とする場合、小建中湯を1~2週間だけ服用するのでは意味がありません。少なくとも半年以上は継続して服用することをおすすめします。

◆小建中湯の効能・効果◆

体力虚弱で、疲労しやすく腹痛があり、血色がすぐれず、ときに動悸、手足のほてり、冷え、ねあ
せ、鼻血、頻尿および多尿などを伴うものの次の諸症:小児虚弱体質、疲労倦怠、慢性胃腸炎、腹
痛、神経質、小児夜尿症、夜泣き

生命力を養う六味地黄丸(ろくみじおうがん)

小建中湯とならび小児の代表的な漢方薬が六味地黄丸(ろくみじおうがん)です。

小建中湯がややお腹の弱い子に適しているのに対して、六味地黄丸は胃腸障害のない子に適しています。

生命力を主り、発育を促す腎(じん)を補うことで、発育不良や虚弱体質を改善する漢方薬です。

◆六味地黄丸の効能・効果◆

体力中等度以下で、疲れやすくて尿量減少又は多尿で、ときに手足のほてり、口渇があるのものの
次の諸症:排尿困難、残尿感、頻尿、むくみ、かゆみ、夜尿症、しびれ

おわりに

子どもたちには元気に明るく、たくましく育ってほしいものです。

小児虚弱体質と一言にいっても、その症状の現れ方や体質は一人ひとり異なります。また、年齢や運動の有無によっても適した漢方薬は異なります。

まずはお気軽にご相談ください。