自律神経とは

自律神経は、わたしたちの生命維持に大切な働きをする神経のことです。自分の意思とは関係なく、無意識のうちに心臓の働きや呼吸、発汗、消化器などの働きを調節しています。日中に何かに集中しているときでも、夜に寝ているときでも、生命維持のために絶え間なく働き続けているのが自律神経です。

交感神経と副交感神経

自律神経には、日中の活動的な時に働く交感神経(こうかんしんけい)と、夜間やリラックスしているときに働く副交感神経(ふくこうかんしんけい)の2種類があります。

交感神経と副交感神経は、まるでシーソーのようにお互いにバランスをとりながら、からだのリズムを調節しています。

交感神経の働き
  • 気持ちを興奮させる
  • 血圧や心拍数を上げる
  • 消化器の働きを抑える
  • 筋肉を緊張させる
  • 血管を収縮させる
  • 発汗を増やす
副交感神経の働き
  • 気持ちを落ち着ける
  • 血圧や心拍数を下げる
  • 消化器の働きを活発にする
  • 筋肉を緩める
  • 血管を拡張する
  • 発汗を抑える

自律神経失

過度なストレスや慢性的な疲れ、不規則な生活が重なり、自律神経が乱れた状態、つまり活動的な交感神経とリラックスの副交感神経のバランスが乱れた状態を「自律神経失調症」といいます。

交感神経が過剰(交感神経優位)な状態になると、緊張・動悸・頭痛・発汗・不眠・肩こり・手足の冷えなどの不調が現れます。

一方、副交感神経が過剰(副交感神経優位)な状態になると、だるさ・関節痛・腫れ・発熱・下痢・アレルギーなどの不調が現れます。

自律神経失調症は、さまざまな不調が同時に現れます。そのため、現代医学ではなかなか対応が難しく、病院でも「ゆっくり休みましょうね。」「ストレス溜めないようにね。」と言われて終わりになってしまうことも多くあります。

漢方で全体のバランスを整える

胃が痛ければ胃薬を処方する、頭痛があれば痛み止めを処方するというように、西洋医学(現代医学)ではひとつひとつの症状に対して薬を処方していきます。

一方で漢方医学では、ひとつひとつの症状を大事にしながらも、全体のバランスを整えることを大切にします。意外かもしれませんが、胃痛や頭痛、だるさ、異常な発汗などはバラバラに起きている別々の症状ではなく、すべてつながっていると考えるのが漢方医学の特徴です。

漢方医学では、気血水(きけつすい)や五臓(ごぞう)という考え方をもとに、からだ全体のバランス不調、さらには、こころとからだのバランス不調まで見ていきます。

からだのどこに無理がかかっているのか、どこの巡りが悪くなっているのかを見ていくことで、全体のバランスが改善できるのです。これを西洋医学の言葉でいえば、交感神経と副交感神経のアンバランスが改善され、自律神経失調症を改善できるということです。

薬剤師として、西洋医学(現代医学)を否定するつもりはありませんが、西洋医学の視点からでは自律神経失調症の原因を見つけることは難しいのが現状です。「ゆっくり休みましょうね。」「ストレス溜めないようにね。」と言われてしまうのも、ある面では仕方のないことではあるのです。

自律神経失調症は、一言でいえば「バランス不調」。こころとからだの両面、全体をみていく漢方医学だからこそ、長引く不調も改善できるのです。

自律神経失調症を改善する漢方薬

柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

◆効能・効果◆
体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期障害、小児夜泣き、便秘

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

◆効能・効果◆
体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすいものの次の諸症:神経質、不眠症、小児夜泣き、夜尿症、眼精疲労、神経症

加味逍遙散料(かみしょうようさんりょう)

◆効能・効果◆
体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症
<効能・効果に関連する注意>
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことです。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

◆効能・効果◆
体力中等度をめやすとして、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、のどのつかえ感

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

◆効能・効果◆
体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、更年期障害、血の道症、歯ぎしり
<効能・効果に関連する注意>
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことです。