脂漏性皮膚炎とは
症状
頭皮やおでこ、こめかみ、小鼻のわき、眉毛、わきの下など、皮脂の分泌が多い所に起こる湿疹性の皮膚炎です。
患部は赤みがあり、やや黄色味を帯びた湿り気があるフケ、または乾燥したうろこ状のフケが出ます。
新生児期から乳児期に見られる「乳児型」と、思春期以降の成人に見られる「成人型」があります。
「乳児型」の脂漏性皮膚炎は、適切なスキンケアを行うことにより、通常は1歳までに軽快します。
「成人型」の脂漏性皮膚炎は、慢性的な経過をたどることが多く、放置していても自然に回復することは困難です。
脂漏性皮膚炎の出やすい部位
脂漏性皮膚炎の原因
皮膚に常在しているマラセチアというカビ(真菌)の一種が脂漏性皮膚炎の発症に関わっているといわれています。
マラセチアは人の皮膚から分泌される皮脂をエサにしています。マラセチアは皮脂を分解し、遊離脂肪酸という物質を生み出します。この遊離脂肪酸により、皮膚の炎症が起こると考えられています。
マラセチアは、本来は健康な皮膚の方でも持っている常在菌の一種です。
何らかの原因でマラセチアが異常増殖することで脂漏性皮膚炎が引き起こされると考えられています。
マラセチア(真菌)は悪玉菌
お肌に住む「善玉菌」と「悪玉菌」
お腹の中には善玉金と悪玉菌が住んでいるということを聞いたことがあるのではないでしょうか?健康な方でも、ごく当たり前のように持っているこれらの菌を総称して常在菌(じょうざいきん)と呼んでいます。
実は、目に見えないだけで、お肌にたくさんの常在菌が住んでいます。
お肌の常在菌は、古い角質を食べて清潔にしたり、お肌を守る物質を生み出す「善玉菌」と、湿疹や痒みの原因となる「悪玉菌」に分類されます。
脂漏性皮膚炎の原因となるマラセチアは、悪玉菌に分類されています。
皮脂膜と常在菌
お肌の表面は、皮脂膜(ひしまく)と呼ばれる、お肌から分泌される汗(水分)と皮脂(油分)が混ざり合った天然の保湿クリームで保護されています。
お肌の常在菌は、この皮脂膜に住んでいます。
皮脂膜が健康だと、善玉菌と悪玉菌の適切なバランスが保たれ、きれいなお肌となります。
一方で、何らかの原因で皮脂の分泌量が増えすぎたり、必要以上に皮脂膜を洗い落としすぎたりすることで、皮脂膜、すなわちお肌の常在菌の住む環境が乱されると、過剰に悪玉菌が増えてしまい、肌荒れにつながってしまいます。
スキンケア
内側と外側、両面から改善していく
当薬局へ脂漏性皮膚炎のご相談にいらっしゃる方は、当然、漢方薬による内面からの治療を希望されることがほとんどです。
脂漏性皮膚炎をはじめ、皮膚疾患では漢方薬による内面からの体質改善はとても重要ですが、それと同じくらい表側からの皮膚環境の改善、すなわちスキンケアも重要です。
洗いすぎは逆効果
「脂漏性皮膚炎は多すぎる皮脂が原因」、「マラセチア(真菌)が原因」と聞くと、徹底的に洗い流したくなる方も少なくないようです。
実際に、一般的に販売されている洗顔フォームやボディーソープでは、「しっかり洗い落とす」ですとか、「根こそぎゴッソリ」などといったフレーズが多く見られます。
しかしながら、強すぎる洗浄剤は当然、お肌への負担も大きくなります。
また、本来お肌の健康を守るはずの善玉菌や皮脂膜まで洗い落とされてしまい、結果として肌荒れをさらに悪化させることにつながります。
汚れや過剰な皮脂はしっかり洗い流すけれども、必要なものまで洗い落とさない。そのために洗顔石鹸やシャンプー、ボディーソープはとても大切です。
化粧水とスキンケアオイル
先ほどお話ししたように、お肌の健康を守る皮脂膜は水分と油分でできています。
入浴や朝の洗顔で失われた水分と油分を補い、いち早く皮脂膜を再生させるために、水分である化粧水と、良質な油分であるスキンケアオイルの使用は欠かせません。
脂漏性皮膚炎の方は皮脂が過剰に出ているからと言って、スキンケアオイルを使用しないケースも見受けられますが、お肌の善玉菌を増やすためにも「良質な」油分を補うことは重要です。
化粧品は成分で選ぶ
化粧品や石鹸を選ぶときには、パッケージや口コミを参考に選ぶことが多いのではないでしょうか?
もちろん、それ自体を悪いとまでは言いませんが、当薬局では何で出来ているか、つまり「成分」で選ぶことをおすすめしています。
ここで他社批判をするつもりはありませんが、一般的に販売されている製品の多くには石油由来の化学物質が含まれており、それが原因と思われる肌荒れも少なくありません。
当薬局では、石油由来の化学物質を一切含まない化粧品を取り揃えております。
詳しくは店頭にてご相談ください。
脂漏性皮膚炎の漢方治療
お肌は内臓の鏡
脂漏性皮膚炎の原因として、皮脂の過剰な分泌や皮膚常在菌の一種であるマラセチアが関わっていると言われますが、ではなぜ皮脂やマラセチアが異常に増えるかという根本的な原因はいまだに分かっていません。
目に見える表面的な皮膚だけの問題ではなく、ストレスや寝不足、食生活の乱れ、ホルモンの乱れなどの内面的な要因が関連しているといわれています。
漢方には古くから「お肌は内臓の鏡」という考え方があり、内面の乱れが肌荒れとなって現れてくると考えています。
実際に、便秘になると肌が荒れたり、生理前にニキビが出来やすかったり、という経験がある方も少なくないのではないでしょうか?
脂漏性皮膚炎についても同じように、何らかの内面的な原因があると考え、治療を進めていきます。
一人ひとりに合った漢方薬で改善
同じ脂漏性皮膚炎という病名の患者さんでも、その内面的な原因はそれぞれ異なります。
例えば、慢性的なストレスが原因で自律神経が乱れている方もいます。血流が悪いことが原因で女性ホルモンが乱れている方もいます。あるいは、慢性的な便秘で、体内に毒素が停滞していることが原因となる方もいます。
一般的な西洋医学では「標準治療」といって、脂漏性皮膚炎であれば、どんな患者さんに対してもほぼ同一の治療が行われます。
一方、漢方では病名だけでなく一人ひとり異なる内面的な原因、すなわち「体質」に合わせて適切な漢方薬を選択していきます。
これにより、画一的な治療法だけでななかなか改善出来なかった方でも、改善を期待することが出来るのです。
脂漏性皮膚炎の漢方薬
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
脂漏性皮膚炎に使用される代表的な処方です。
10種類の生薬で、体内の毒素を取り除くという意味から「十味敗毒湯」と名付けられました。
やや神経質な傾向があり、皮膚症状を繰り返すタイプの方の体質改善薬として用います。
◆効能・効果◆
体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものの次の諸症:化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、湿疹・皮膚炎、水虫
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
皮膚の痒みや赤みが強い場合に適している処方です。
比較的体力があり、イライラすると皮膚症状が悪化する方に向いています。
◆効能・効果◆
体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色が赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの次の諸症:鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎
<効能・効果に関連する注意>
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことです。
治頭瘡一方(ぢずそういっぽう)
やや便秘傾向があり、頭部や顔を中心に症状が出ている方に向いています。
◆効能・効果◆
体力中等度以上のものの顔面、頭部などの皮膚疾患で、ときにかゆみ、分泌物などがあるものの次の諸症:湿疹・皮膚炎、乳幼児の湿疹・皮膚炎
白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
体にこもった熱を冷ますことで、痒みを改善します。
口の渇きやほてりを感じる方に向いています。
◆効能・効果◆
体力中等度以上で、熱感と口渇が強いものの次の諸症:のどの渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ
温清飲(うんせいいん)
炎症を鎮める「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」と血行を改善する「四物湯(しもつとう)」を合わせた処方です。
頭部のふけ(鱗屑)のみが目立ち、痒みはあまりない方に向いています。
◆効能・効果◆
体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎
<効能・効果に関連する注意>
血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことです。
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
血行が悪くて皮膚が浅黒い人、手足の裏に汗をかきやすい方の体質改善に用います。
◆効能・効果◆
体力中等度以上で、皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの次の諸症:蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび